『解像度を上げる』は、言語化の重要性を説いた本

世は言語化至上主義時代に突入。とにもかくにも言語化言語化を制するものが、仕事を制し、人生を模制するのだ、と言わんばかりの昨今である。

たしかに実感として言語化能力が高い人物は、ビジネスにおいて大きな成果を出しているように思う。

前職の上司は言語化が上手かった。今ほしい言葉を今ほしいタイミングで言ってくれるのだ。私が仕事でミスをした時は、「どんどん失敗しなさい」と言ってくれたし、私が成果を上げた時には「そりゃ、あれだけ成果を上げるために行動してたんだから、自ずと成果が出るのは分かってたよ。でもおめでとう」。

言語化能力が高い人から貰う言葉は、腑に落ちる度合いが違う。なんの違和感なく受け入れられる。もちろん上司の言葉に納得感があったのはそれ以外の要因もあるだろうが、少なくとも自分は上司のことを言語化が上手い人と感じていた。尊敬の念を抱いていたようにも思う。

本書『解像度を上げる』を読んだところ、上記のような事例は言語化の一部分に過ぎないとわかった。

つまり、上司は私に対する解像度が高かったのだ。

本書では「解像度」という言葉を、以下のように説明している。

解像度が高いとはどういうことか、もう少し詳しく見ていきましょう。「健康になりたい」という人にアドバイスする場合を例にとって考えてみます。様々な選択肢が思い浮かびます。食事制限かもしれませんし、運動かもしれません。すでに病気にかかっていれば、治療が必要かもしれません。「健康になりたい」というのはあまりにも漠然とした要望のため、答えに窮します。そこでまずはその人に質問をして、現状把握することが必要でしょう。  話しているうちに、どうやらその人の言う「健康になりたい」というのは、「筋肉を付けたい」という要望であり、さらに「上腕二頭筋上腕三頭筋を鍛えたい」ということが分かってきたとします。すると「そのためにはこの筋トレ」「筋トレと一緒にこのプロテインを飲む」「休息を 2日間ちゃんと取る」「最初はこのトレーニングから始めて、 1か月後には発展的なトレーニングを試してみる」「もし1つ選ぶなら、この筋トレをするべき」と提案しやすくなるでしょう。このように相手の持つ課題を、時間軸を考慮に入れながら、深く、広く、構造的に捉えて、その課題に最も効果的な解決策を提供できていることが、解像度が高い状態です。

上司は私に対する解像度が高かったために、わたしの課題をわたし以上に見抜いていた。あとはその課題を本人に伝えるだけ。わたしが持っている課題なのだから、答えもわたしの中にあるのは当然だ。自分の奥底に眠っていた課題と解決策を提示されたので、わたしはすぐに納得してみせた。

本書では解像度を上げるために、4つの観点で考えることを提案している。

  • 深さ
  • 広さ
  • 構造
  • 時間

解像度を上げるためには、課題について深く、広く、構造的に、時間軸をも捉えながら調べて、考える必要がある。その具体的内容やり方を書いているのが本書である。

約500のページ数は面食らう人もいるかと思うが、文章は分かりやすい。具体例も交えて説明がなされるため、イメージもしやすくなっている。

ただ、本書の内容を一気に全て取り入れることはハッキリ言って難しいと思う。なので、著者が言うようにまずは「深さ」を意識することから始めてみようと思う。

「深さ」「広さ」「構造」「時間」は、どれか一つに、集中的に取り組めばよいわけではありません。4つが相互に影響しあって、解像度は上がっていきます。  現場に何度も足を運んで、「深さ」を考えるための情報をたくさん得たとします。しかし一定以上深めていこうとすると、現場で起こっている現象の「構造」を分析する必要が出てきます。物事を多く知っていて、十分な視野の「広さ」を持っている場合でも、どの部分を深めていくかの判断をするときには、「構造」や「時間」の分析が必要になります。一方で「構造」の分析だけをして、情報を綺麗にまとめているだけでは、一定以上の「深さ」や「広さ」には辿り着けません。「深さ」「広さ」「構造」「時間」のどれかが足りずアンバランスだと、解像度は上がらないということです。 こうしたアンバランスの中で最もよくあるのは、深さが足りないパターンです。そこでまずは「深さ」から始めることをおすすめします。